浅瀬へ戻ると、砂浜には子供連れの一見幸せそうに見える家族、テトラポットの上で戯れあう一見幸せそうに見える恋人達、遠くに浮かぶヨット、もっと遠くに浮かぶベトナム船、描写に戸惑う限りなく他愛もない風景の数々の中に紛れもなく紛れて存在している自分がいる。
寄せては返す波が膝下をくすぐる。深く潜る必要などないではないか。
目に見える世界で十分ではないか。潮の香りが囁きかける。
観念との戦いであったのか? 観念するとはこのことであろうか?
潜っていると潮時すらわからない、わかるすべがなかった。
わかるすべを持たされた時、何も言えずただただ夕日が沈んでいくのを眺めていた。
地球の約7割は海らしい。
それを知って少しホッとした自分がいた。